エージェント型AIとは?定義・活用例・生成AIとの違い

はじめに
生成AI(Generative AI)の次の進化として、いま大きな注目を集めているのが、自律的にタスクを完遂するエージェント型AI(Agentic AI)です。
生成AIが文章やコードなどのコンテンツ制作を得意とするのに対し、エージェント型AIはユーザーの意図を理解し、計画を立て、複数のステップを自律的に実行する能力を備えています。
本記事では、エージェント型AIの定義、生成AIとの違い、注目される理由、具体的な活用例、エージェント型AI開発におけるAIデータについて、解説します。
エージェント型AIの定義
エージェント型AI(Agentic AI)とは、与えられた目標に対して自ら計画を立て、状況に応じて判断を変えながら、自律的にタスクを完遂するAIシステムを指します。
デジタル代理人(エージェント)であるエージェント型AIは、ユーザーが入力するプロンプト(指示)に対して回答を生成するだけではありません。
何をすべきかを考え、実行し、その結果を評価し、次の行動を決定する、というプロセスを自律的に繰り返す点が最大の特徴です。
エージェント型AIが自律的に行う4つのステップ
具体的には、以下のようなサイクルを回しながらタスクを進めます。
- 理解:最終的な目的を理解し、その達成に何が必要か判断する
- 計画:複雑なタスクを、複数のステップに細分化する
- 実行:検索、計算、外部ツールやAPIを自ら選択・操作する
- 適応:実行結果を確認し、必要に応じて次の行動を調整する
このように、エージェント型AIは、人が行っている一連の業務プロセスを、自律的に判断しながら進めることができます。
生成AIとの根本的な違い
生成AIは、ユーザーが入力したプロンプトに対して文章、コード、画像などのコンテンツを生成することに優れています。文章作成や要約、アイデア出しといった場面では非常に有効ですが、業務全体を自律的に管理し、最初から最後まで完了させることはできません。
生成AIは基本的に聞かれたことに答えるAIであり、次に何をすべきかを自分で判断して行動する設計にはなっていません。
一方、エージェント型AIは、生成AIを含む複数の技術(ルール、API連携、外部ツール、履歴データなど)を組み合わせ、タスク完了そのものを目的として設計されたAIです。
目標を理解し、作業を分解し、必要なツールを使いながら実行し、途中で状況が変われば判断を修正します。
そのため、エージェント型AIは以下のような用途で特に効果を発揮します。
- 複数の工程が連続する業務(例:確認→作成→実行→報告)
- 繰り返し発生する定型作業(例:問い合わせ対応、更新処理、監視業務)
- 状況に応じた判断や分岐が必要なオペレーション(例:条件ごとの対応切り替え)
自律性と人の関与(Human-in-the-loop)
エージェント型AIは完全に人を排除するものではありません。
実運用では、重要な判断やリスクの高い処理に対して、人が確認・承認する仕組み(Human-in-the-loop)を組み込むことが一般的です。
これにより、以下のようなメリットがあります。
- 予期しない行動の防止
- 業務の透明性・監査性の確保
- 安全性や信頼性の向上
エージェント型AIが注目される理由
エージェント型AIが注目されている背景には、生成AIの普及があります。
生成AIによって高品質なアウトプットを生み出すことは容易になりましたが、それを業務に組み込み、実行までつなげる部分が課題として残っていました。
エージェント型AIは、このギャップを埋める存在として、アイデアや指示を実行可能な成果に変える役割を担っています。
エージェント型AIの主な活用例
エージェント型AIは、複数の工程があり、人が判断しながら進めてきた業務で特に効果を発揮します。ここでは、実際に導入が進んでいる代表的な活用例を紹介します。
業務プロセスの自動化(エンタープライズ)
エージェント型AIは、調達・契約・更新などの業務プロセス全体を自律的に実行できます。
例えば、サプライヤーとの契約更新では、以下のような一連の流れをAIが担います。
- 契約条件の確認
- 提案内容の作成
- カウンターオファーの提示
- 合意内容の記録とシステム反映
このようなエンドツーエンドの処理により、担当者は戦略的な判断や重要な交渉に集中できるようになります。
例えば、Walmartでは、エージェント型AIを活用してサプライヤーとの契約交渉業務を自動化し、多数の小規模契約を効率的に処理しています。
参考:https://hbr.org/2022/11/how-walmart-automated-supplier-negotiations
セキュリティ運用・インシデント対応
セキュリティ分野でも、エージェント型AIの導入が進んでいます。
アラート対応では、単に通知を出すだけでなく、調査・分析・初動対応までを一連の流れとして処理する必要があります。
エージェント型AIは、以下のようなプロセスを自律的に進めます。
- 複数のツールから情報を収集
- インシデントの関連性を分析
- 対応手順を提案・実行
- 結果をログとして記録
例えば、Microsoftでは、セキュリティ領域においてエージェント型AIを活用し、インシデント対応の自動化と迅速化を実現しています。
IT運用・SRE
IT運用やSREの現場では、障害対応のスピードと正確性が求められます。
エージェント型AIは、監視アラートを起点に、原因調査から一次対応までを支援します。
エージェント型AIは、以下のようなプロセスを自律的に進めます。
- アラート内容の分析
- 過去の障害事例との照合
- 原因候補の特定
- 運用手順(Runbook)の実行
例えば、DatadogのAI SREエージェントは、障害対応の標準化とMTTR(平均復旧時間)の短縮に貢献しています。
参考:https://www.datadoghq.com/blog/bits-ai-sre/
エージェント型AIが向いている業務の特徴
これらの事例から、エージェント型AIが特に有効なのは以下のような業務だと分かります。
- 複数の工程が連続する業務
- 判断と実行を繰り返す作業
- 件数が多く、人手ではスケールしにくい業務
エージェント型AIと生成AIを組み合わせる
実際の業務では、エージェント型AIと生成AIはどちらか一方を選ぶものではありません。多くの企業では、両者を組み合わせたハイブリッド構成が採用されています。
ハイブリッド構成の基本的な考え方
エージェント型AIと生成AIの役割分担は、以下のように整理できます。
エージェント型AIの役割
- 目標の理解
- タスク分解
- 実行管理
- 結果の検証・次の判断
生成AIの役割
- メールやレポートの作成
- 提案文・説明文の生成
- クエリやコードの作成
このハイブリッド構成により、生成の柔軟性と業務完了の確実性を同時に実現できます。
実運用におけるワークフロー例
例えば、契約更新業務を自動化する場合、以下のような流れになります。
- エージェント型AIが契約更新という目標を認識
- 必要な作業を複数のステップに分解
- 各ステップで生成AIが文案や提案文を作成
- エージェント型AIが内容を検証し、実行
- 実行結果を記録し、次回の判断に活用
エージェント型AIは業務全体を前に進める役割を担い、生成AIは各工程を支える部品として機能します。
エージェント型AI時代に重要になるAIデータ
エージェント型AIの性能や安全性を左右するのは、アルゴリズムだけではありません。
どのようなデータを使い、どのように評価・改善しているかが、実運用での成否を大きく分けます。生成AIとエージェント型AIでは、必要とされるデータの性質が異なります。この違いを理解することが、エージェント型AIを安定して運用する第一歩です。
生成AIに必要なAIデータ
生成AIは、文章やコードなどのアウトプット品質を高めるために、事前に整備された学習データを必要とします。
生成AI開発における代表的なデータには、以下があります。
- 正解ラベル付きの学習データ(アノテーション)
- 出力品質を評価するための評価データ
- 表現やスタイルを調整するためのフィードバックデータ
これらのデータが不十分な場合、生成AIは以下のような問題を引き起こします。
- 表現が不安定になる
- 特定分野で精度が落ちる
- 意図しない出力をする
エージェント型AIに必要なAIデータ
エージェント型AIでは、実行の過程そのものが重要なデータになります。
単に結果を見るだけでなく、どのような判断をし、どの行動を取ったかが記録・分析されます。
エージェント型AI開発における代表的なデータには、以下があります。
- タスク実行ログ
- 行動の成功・失敗データ
- 人による評価・承認データ(Human-in-the-loop)
これらのデータを活用することで、以下のようなメリットがあります。
- 判断精度の向上
- 無駄な行動の削減
- リスクの早期検知
ログと評価がもたらす改善サイクル
エージェント型AIの大きな特徴は、実行しながら学習・改善できる点にあります。
そのためには、ログと評価データを活用した改善サイクルが欠かせません。
- 実行内容を記録する
- 人やシステムが結果を評価する
- 評価をもとに次の行動を最適化する
この改善サイクルが回らない場合、エージェント型AIは動いてはいるが、信頼できない存在になってしまいます。
人の関与が品質と安全性を支える
エージェント型AIでは、完全な自動化よりも制御された自動化が重要です。
特に業務やセキュリティに関わる領域では、人の確認や承認を組み込むことで、以下が可能になります。
- 誤った判断の防止
- 責任の所在の明確化
- 監査や説明への対応
このような人の関与を前提としたデータ設計は、エージェント型AIを実運用に耐えるものにします。
AIデータが差別化要因に
エージェント型AIが普及するにつれ、「どのモデルを使うか」よりも「どのデータをどう扱うか」が重要になります。
高品質でレビュー可能なAIデータを継続的に整備できる企業は、生成AI・エージェント型AIの双方で、安定した成果を出し続けることができます。
この領域で、AppenのようなAIデータ企業は、学習データの整備から評価、改善までを一貫して支える役割を担っています。
エージェント型AIについてご関心がありましたら、お気軽にご相談ください。

