生成AIアプリケーション導入における基盤モデルの選び方

企業が生成AI開発に活用する基盤モデルを選ぶ際、「どの基盤モデルを選ぶか」は極めて重要な課題です。
本記事では、生成AIの開発に最適な基盤モデルを選定するために考慮すべきポイントとステップについて、IDCとAppenがまとめたレポート「生成AIアプリケーションに最適な基盤モデルの選び方」から紹介していきます。
自社に最適な基盤モデルとは?
近年、生成AIアプリケーションを支える基盤モデル(Foundation Model)の進化は著しく、GPT-4、Claude、Gemini、LLaMAなど、多様な選択肢が登場しています。
モデルのパラメータ数や性能が日々進化する中で、
「一番有名なモデルを選べばいい」
「一番パラメータ数が大きいものを選べばいい」
「一番高性能なモデルを使いたい」
といった考え方に陥りがちです。
しかし、最も大規模で高性能なモデルが、自社にとって最適とは限りません。
AIをどのようにビジネスで活用したいのか、社内にどれだけのリソースがあるのか、自社のビジネス目標と合致しているか、など自社の状況やビジネス目標に合ったモデル選定が非常に重要です。
具体的には、最適なモデルを選択するため、体系的で構造化された大規模言語モデル(LLM)の評価プロセスを導入することが不可欠です。これにより、以下のようなメリットが期待できます。
評価プロセスを導入するメリット
- モデル選定の意思決定の精度向上
- コストの最適化
- 性能の最大化
IDCの調査によると、企業が基盤モデルを選定する際に重視しているのは以下の点です。
企業が基盤モデルを選定する際に重視している点
- 44%の企業が、従業員の生産性向上を目的としたユースケースに積極投資
- モデル選定の主な評価基準は、性能(41%)、コスト(35%)、計算効率(29%)
- 61%の企業が、カスタマイズ性や柔軟性を理由に、独自モデルよりもオープンソースモデルを支持
モデル選定において最も重要なのは、知名度やパラメータ数ではなく、自社の目標や戦略と合致しているかどうかです。
人間による評価で基盤モデルを比較する
生成AIにおける基盤モデルの性能を評価する際、自動ベンチマーク(Automated Benchmarks)が用いられることがあります。これは、モデルの一般的な言語能力や論理的思考力を数値で比較するものです。
しかし、数値指標だけでは、実際のビジネスシーンや、業務フローにおける使い勝手、適合性までを評価することは困難です。現場での実用性を見極めるには、より多角的な視点が求められます。
そこで重要になるのが、人間による評価(Human Evaluation)です。
実際の業務や想定されるシナリオに基づいて、人間がモデルを評価することで、数値化が難しい以下のような観点を補うことができます。
人間による評価のメリット
- ユーザーの意図に沿った自然な出力か
- 自社のブランドトーンに適した表現か
- 偏見やバイアスのない、公平で中立的な出力か
- 曖昧な入力にも柔軟に対応し、使い勝手がいいか
特に、業界の専門家を巻き込んだ体系的・構造的な評価プロセスを取り入れることで、単なるスコア以上の多角的な観点から、実運用における真の性能を見極めることが可能になります。
モデルの評価には、技術的性能だけでなく、現場での実用性や戦略的適合性といった視点を取り入れることが不可欠です。
基盤モデルを評価する4つのステップ
機械学習エンジニア、データサイエンティスト、またはAI戦略を担う担当者の役割は、単にAIソリューションを構築・導入することにとどまりません。それをいかにビジネス面でのメリットへと結びつけるかが重要です。
「どの基盤モデルを選ぶか」という判断は、
- スケーラビリティ:将来的な拡張のしやすさ
- コスト管理:維持・運用コストの最適化
- カスタマイズや統合の柔軟性
- 長期的なROI(投資対効果)
- 競争優位性の確保
など、ビジネスの根幹に関わる要素に直結する重要なものです。
基盤モデルを評価する4つのステップ
- 生成AIの活用目的(ユースケース)を明確にする
- 目的に合致した基盤モデルを絞り込む
- 評価・テストを徹底的に実施する
- 本番環境への導入後も、継続的に改善する
戦略的かつ構造化された継続的なアプローチにより、生成AIの導入効果を最大化し、ビジネスにおける明確な価値創出へとつなげることができます。
Appenの基盤モデル評価プロセス
企業が基盤モデルを適切に評価・選定するには、社内の知見だけでは限界があるのが実情です。そのため、多くの企業が、豊富な経験と知見、専門性を持つ外部パートナーとの協業を選択する傾向にあります。
Appenは、AIトレーニングデータとモデル評価の分野において世界的な実績を有しており、現在、世界の主要な基盤モデル開発企業の80%と連携し、数多くの大規模AIプロジェクトを支援しています。
豊富な経験を活かし、Appenは企業の基盤モデル選定プロセスにおいて、以下のような形で包括的な支援を提供しています。
- 高精度なモデルパフォーマンスの実現
- ユースケースや業務要件に応じた柔軟性の確保
- 倫理的観点の考慮(バイアス除去、公平性の確保)
- コスト効率に優れた運用の実現
さらに、Appenは独自の高品質データセット、人間による評価プロセス、企業のニーズに応じたカスタマイズ可能な検証プロセスを通じて、AI導入に伴う以下のようなリスクを大幅に低減します。
- モデルに内在するバイアスの低減
- セキュリティの脆弱性を軽減
- 法規制やコンプライアンス要件への対応
Appenは、企業が基盤モデルを安全かつ責任ある形で本番環境へ導入・運用できるよう、選定から運用まで、包括的にプロジェクトをサポートします。
まとめ
この記事では、IDCとAppenが共同で公開したレポート「生成AIアプリケーションに最適な基盤モデルの選び方」から、生成AI開発において基盤モデルを選ぶ際に考慮すべきポイントと実践的なステップを紹介しました。
- モデルの規模や汎用性よりも、ビジネスニーズとの適合性が重要
- 自動ベンチマークだけに頼るのではなく、人間による評価を取り入れる
- ブランドとの整合性、公平性、実用性といった要素も見極める
基盤モデルを評価する4つのステップ
- 生成AIの活用目的(ユースケース)を明確にする
- 目的に合致した基盤モデルを絞り込む
- 評価・テストを徹底的に実施する
- 本番環境への導入後も、継続的に改善する
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