ファインチューニングとは?定義・重要性・手法・種類・ステップ

05/31/2024

ファインチューニングとは?

本記事では、ファインチューニングの定義、目的、重要性、手法、そのメリットとデメリット、種類、ファインチューニングの具体的なステップを解説していきます。

ファインチューニングの定義

ファインチューニング(Fine-tuning)とは、「微調整」とも呼ばれ、トレーニング済みの大規模言語モデルを特定のユースケースに適応させるために再調整するプロセスを指します。

一般的には、基盤モデルと呼ばれる汎用的な大規模言語モデルに対し、ユースケースに適したデータセットを用いて再学習を行い、特定の業界やユースケースに最適化します。

大規模言語モデルとファインチューニングの関係

大規模言語モデルへの注目が高まる中、さまざまな業界でその活用方法が模索されています。 MicrosoftやOpenAI、Baidu(百度)といった資金力のある企業は、大規模言語モデルの独自開発や改良に積極的に取り組んでいます。しかし、多くの企業にとってはコスト面でこれを実現するのは難しいのが現状です。基盤モデルの構築には、大量のデータや高性能なコンピューターなど、多大なリソースと膨大なコストが必要となるからです。

なぜ企業はファインチューニングに注目するのか?

多くの企業にとって基盤モデルの独自開発のハードルが高いからといって、大規模言語モデルの活用ができないわけではありません。オープンソースの基盤モデルが広く共有されるようになったことで、それらをファインチューニング(微調整)することで、特定の業界や独自のユースケースに特化したアプリケーションを開発できるようになりました。

ファインチューニングの基本原則と適用例

ファインチューニングの基本原則と適用例を紹介します。

ファインチューニングの基本原則

ファインチューニングの基本原則は、機械学習モデルが最初にトレーニング(学習)したデータのロジックと知識しか認識・理解できないという点にあります。 トレーニングデータに含まれていない情報を認識・理解することは難しく、特に特定のシナリオで正確な出力を求められる場合、その制約が顕著に表れることがあります。

ファインチューニングの適用例

汎用的な大規模言語モデルは、幅広い言語情報を網羅し、流暢な会話を行うことが可能です。 しかし、例えば医療分野で患者からの問い合わせに効果的に対応するなど、より高度かつ専門的なタスクに対応するアプリケーションを開発するには、追加データを用いたモデルの再トレーニングが必要となります。

例えば、「イブプロフェンは風邪薬と一緒に服用できるのか」という質問に正確に回答させるには、基盤モデルをファインチューニングし、医療分野の専門知識を付加することが求められます。

ファインチューニングの重要性

事前トレーニング済みモデルは、基盤モデル(Foundation Model)学習済みモデルとも呼ばれ、質問への回答、データの要約、さらにはコードの記述など、さまざまなタスクを実行できます。

しかし、単一のモデルですべての問題を解決できるわけではありません。特に、業界や組織特有の情報など、汎用的な大規模言語モデルでは対応が難しい場合には、基盤モデルをファインチューニングし、適切な特定データセットを用いる必要があります。こうした場合、ファインチューニングは不可欠なプロセスといえるでしょう。

ファインチューニングの手法、メリットとデメリット

ファインチューニングの手法について説明します。 ファインチューニングは、事前トレーニング済みモデルに対する調整(チューニング)の程度に応じて、「フル・ファインチューニング」と「リパーパシング」の2つの手法に分類されます。


フル・ファインチューニング(Full Fine-tuning)とは?

フル・ファインチューニングとは、事前トレーニング済みモデルの全てのパラメーターを調整して、特定のタスクに最適化する手法です。このアプローチでは、モデルのすべての層(レイヤー)とパラメーターが更新され、ターゲットタスクの要件に完全に適応するよう設計されています。


フル・ファインチューニングを選択すべきユースケース

  • タスクと事前トレーニング済みモデルの間に大きな違いがある場合
    • 【例】汎用モデルを特定分野に適応させたい場合
  • タスクがモデルに高い柔軟性と適応性を求める場合
    • 【例】複雑な文脈理解や多言語対応を求めるタスク

フル・ファインチューニングのメリット

  • 高い精度が期待できる
    • タスクに特化することで、より優れたパフォーマンスを発揮。
  • 柔軟性が向上
    • 複雑なタスクにも対応可能

フル・ファインチューニングのデメリット

  • 膨大な計算リソースと時間が必要となる。
  • データ品質がモデル性能に大きな影響を与える。

リパーパシング (Repurposing)とは?

リパーパシングとは、事前トレーニング済みモデルの下層を変更せず、最上層または選択したいくつかの層(レイヤー)だけをファインチューニングする手法です。このアプローチの目的は、事前にトレーニングされたモデルの一般的な知識を保持しつつ、最上層を特定のタスクに適応させることです。

リパーパシングを選択すべきユースケース

  • ターゲットタスクと事前トレーニング済みモデルの間に一定の類似性がある場合
  • タスクデータセットが小規模である場合

リパーパシングのメリット

  • 計算リソースと時間を節約できる。
    • フル・ファインチューニングに比べて、少数の層しか更新しないため、効率的。
  • 一般的な知識を保持しつつ、特定のタスクに最適化できる。

リパーパシングのデメリット

  • パフォーマンスが低下する可能性がある。
    • フル・ファインチューニングに比べて、タスクに対する適応力が若干制限されることがある。

フル・ファインチューニングとリパーパシングのどちらを選択すべきかは、タスクの特性と使用可能なリソースに依存します。タスクと事前トレーニング済みモデルの間に大きな違いがあり、高い適応力が求められる場合は、フル・ファインチューニングが適している可能性があります。一方で、タスクが事前トレーニング済みモデルと類似しており、リソースに制限がある場合は、リパーパシングの方が効果的です。タスクの要件と実験結果に基づいて、最適なファインチューニング手法を選択することが重要です。


ファインチューニングの種類

大規模言語モデルのファインチューニングは、使用するデータセットのタイプに基づいて、「教師ありファインチューニング(教師あり微調整)」と「教師なしファインチューニング(教師なし微調整)」の2つのタイプに分類できます。

教師ありファインチューニング(Supervised Fine-tuning)

教師ありファインチューニングは、ファインチューニングの過程で、ラベル付き学習データセットを使用するプロセスです。これらのラベルは、ファインチューニング中のモデルに対するターゲット出力を提供します。教師ありファインチューニングでは、通常、各サンプルに関連付けられたラベルを持つ分類データセットなど、タスク固有のラベル付きデータセットが使用されます。これにより、モデルは特定のタスクにより適切に適応できるようになります。

教師なしファインチューニング(Unsupervised Fine-tuning)

教師なしファインチューニングは、ファインチューニングの過程で、ラベル付けされていない学習データセットを使用するプロセスです。つまり、モデルは明示的なターゲット出力なしで、入力データ自体に含まれる情報のみを基に学習します。この手法では、データの本質的な構造を活用して有用な特徴を抽出したり、モデルの表現能力を向上させたりすることを目的としています。

これらの2つのファインチューニング手法は、タスクの性質やデータ量、利用可能なデータに応じて、独立してまたは組み合わせて使用することができます。

ファインチューニングの具体的なステップ

大規模言語モデルのファインチューニングにはさまざまな手法があり、それぞれの手法でファインチューニングのプロセス、アプローチ、準備、サイクルが異なります。しかし、ほとんどの大規模モデルのファインチューニングプロセスには、以下の主要なステップが含まれます。

1)データセットの準備

ターゲットタスクに関連する学習データセット(トレーニングデータセット)を収集・準備します。データセットの品質と精度を確認し、必要に応じてデータクリーニングと前処理を行います。

2)事前トレーニング済み基盤モデルの選択

ターゲットタスクの性質とデータセットの特徴に基づき、適切な事前トレーニング済みモデルを選択します。

3)ファインチューニング戦略の定義

タスクの要件と利用可能なリソースに基づいて、適切なファインチューニング戦略を選択します。フル・ファインチューニングか部分的なファインチューニングか、またそのレベルや範囲について検討します。

4)ハイパーパラメータの設定

学習率、バッチサイズ、エポック数など、ファインチューニングプロセスのハイパーパラメータを決定します。これらの選択は、ファインチューニングのパフォーマンスと収束速度に大きな影響を与えます。

5)モデルのパラメータの初期化

事前トレーニング済みモデルの重みに基づき、ファインチューニング用のモデルパラメータを初期化します。フル・ファインチューニングでは、すべてのモデルパラメータがランダムに初期化されます。部分的なファインチューニングでは、最上層またはいくつかの層のパラメータのみがランダムに初期化されます。

6)ファインチューニングトレーニングの実施

準備したデータセットとファインチューニング戦略を用いてモデルを訓練します。トレーニングプロセスでは、設定されたハイパーパラメータと最適化アルゴリズムに基づいて、モデルのパラメータを徐々に調整し、損失関数を最小化します。

7)モデルの評価とチューニング

トレーニングプロセス中に検証セットを使用してモデルを定期的に評価し、その結果に基づいてハイパーパラメータやファインチューニング戦略を調整します。これにより、モデルのパフォーマンスと汎化能力を向上させることができます。

8)テストモデルのパフォーマンス

ファインチューニングが完了したら、最終的にファインチューニング済みモデルをテストセットで評価し、パフォーマンス指標を取得します。これにより、実際のアプリケーションにおけるモデルのパフォーマンスを評価できます。

9)モデルのデプロイとアプリケーション

ファインチューニング済みモデルを実際のアプリケーションにデプロイし、実用的な要件を満たすためにさらなる最適化とチューニングを行います。


これらのステップは、大規模言語モデルをファインチューニングするための一般的なフレームワークを提供します。ただし、特定のステップや詳細は、タスクや要件によって異なる場合があります。チューニングと最適化は、状況に応じて柔軟に行うことができます。

ファインチューニングは、基盤モデルをゼロからトレーニングするよりも時間を節約でき、効率的な方法です。しかし、依然として専門知識、技術的なリソース、計算能力、管理・開発コストが必要です。そこで、弊社Appenは、大規模言語モデルの導入を容易にするために、カスタマイズされたさまざまなサービスや製品を提供しています。


大規模言語モデルのためにAppenができること

Appenは、大規模言語モデル(LLM)アプリケーション開発を検討している企業向けに、さまざまなサービスと製品を提供しています。

データ収集・データアノテーション

AIデータ企業のAppenは、AIデータ業界のグローバルリーダーとして、28年以上にわたり、290以上の言語・方言に対応した高品質なデータを提供してきました。データクリーニング、データセット作成、データ収集データアノテーションなど、お客様のAIモデル開発に必要な一連のサービスを提供しています。詳しくはこちらをご覧ください。

ファインチューニングとRLHF

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大規模言語モデル開発プラットフォーム

Appenが独自に開発した大規模言語モデル開発プラットフォームは、大規模言語モデルの開発プロセスを効率化します。トレーニング、ファインチューニングだけでなく、開発に必要な様々なツールを提供し、迅速なモデル開発をサポートします。

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