エージェント型AIワークフローとは?仕組み・活用例・導入

はじめに
企業におけるAI活用は、チャットボットやRPAによる部分的な自動化から始まりました。しかし、実際の業務は単純な処理の反復に留まらず、高度な判断や分岐、例外対応を伴う複雑なワークフローによって成り立っています。
従来のルールベースの自動化は、あらかじめ定義された手順には強い一方で、想定外の事態や頻繁な業務変更への柔軟な対応が難しいという課題を抱えていました。
また、生成AI(LLM)は柔軟な思考や文章生成を得意とするものの、業務プロセス全体を自律的に理解し、完遂する仕組みとしては十分とは言えないのが現状でした。
こうした背景から、いま大きな注目を集めているのがエージェント型AIワークフロー(AI Agentic Workflows)です。
これは、AIが単に回答を生成するだけでなく、業務フローそのものを理解し、自ら設計・実行までを担うという画期的なアプローチです。
エージェント型AIワークフローとは
エージェント型AIワークフローとは、大規模言語モデル(LLM)を中核となる推論エンジンとして位置づけ、目標達成に向けた計画立案からツールの実行までを自律的に繰り返す、次世代の自動化プロセスを指します。
従来のワークフロー自動化では、「どの手順を、どの順番で実行するか」を人間が事前に定義する、いわゆるハードコーディングが必要でした。
これに対し、エージェント型AIワークフローでは、AIが最終的な目標(ゴール)を理解し、その時々の状況や文脈に応じて、最適な業務フローを動的に設計・実行します。
この違いにより、固定的な処理の自動化にとどまらず、状況判断や柔軟な対応を含む業務プロセス全体の自動化が可能になります。
従来型ワークフロー自動化との違い
項目
従来型ワークフロー自動化
エージェント型AIワークフロー
起点
手順
目標
判断方法
ルールベース
推論ベース
例外対応
弱い
再計画が可能
ツール連携
静的
動的
拡張性
限定的
高い拡張性
エージェント型AIワークフローを構成する3つのプロセス
エージェント型AIワークフローは、3つの主要プロセスがループ構造で連携することで成立します。この循環構造により、単発の自動化ではなく、状況に応じて進化するワークフローが実現されます。
目標理解とタスク分解(Planning)
ワークフローは「どの手順を実行するか」ではなく、「何を達成したいのか」という目標からスタートします。
AIはユーザーの指示や業務目的を解釈し、以下のような処理を行います。
- 目的の明確化
- サブタスクへの分解
- 依存関係・制約条件の整理
- 成功条件・終了条件の定義
この段階で、業務フローの設計そのものが自動化され、あらかじめ固定された手順に依存しない計画立案が可能になります。
ツール選択と実行(Tool Orchestration)
次に、各タスクを実行するための適切なツールを選択します。対象となるツールには、以下のようなものがあります。
- API
- データベース
- 社内システム
- 外部サービス
エージェント型AIワークフローでは、どのツールを、どの順番で、どのパラメータで使用するかをAIが判断します。
ツールの実行結果は即座に次の推論に反映され、ワークフローは固定化されることなく、状況に応じて動的に進化していきます。
評価・再計画・反復(Evaluation & Iteration)
実行結果が期待通りでない場合、AIは以下のような対応を行います。
- 出力結果の評価
- エラーや失敗要因の推定
- 別ルートでの再実行
- 条件や計画の見直し
この反復プロセスによって、例外処理や想定外の状況にも柔軟に対応できるワークフローが実現します。結果として、より信頼性が高く、実運用に耐える自動化が可能になります。
単一エージェントからマルチエージェントワークフローへ
業務の複雑性が高まるにつれ、1つのエージェントですべての処理を担う構成は非効率になっていきます。
推論、情報取得、実行、検証といった役割を単一エージェントに集中させると、処理遅延やボトルネックが発生しやすくなります。
こうした課題に対する解決策として活用されるのが、マルチエージェントワークフローです。
マルチエージェント構成の考え方
マルチエージェントワークフローでは、役割ごとに専門化したエージェントを配置します。代表的な構成は以下のとおりです。
- 対話を担当するエージェント
- データ取得・検索を行うエージェント
- 実行・更新処理を担うエージェント
これら複数のエージェントを、オーケストレーターが統括し、全体の進行、タスク間の依存関係、実行順序を管理します。
このような構成により、以下のようなメリットがあります。
- 並列処理による処理速度の高速化
- 役割分担による判断精度・実行精度の向上
- 業務拡張に対応しやすいスケーラビリティ向上
エージェント型AIワークフローの活用例
エージェント型AIワークフローは、複数のシステム連携や高度な判断が求められる領域において、特に高い効果を発揮します。ここでは、代表的な活用シーンを紹介します。
EC・小売:バックオフィスと接客の一貫した自動化
注文管理、配送状況の確認、返品・返金処理など、複数のシステムにまたがる業務を単一のワークフローとして統合し、自律的に処理します。顧客対応とバックオフィス業務を分断せず、一貫した自動化が可能になります。
期待される効果
- フロントの顧客対応からバックオフィスまで自動化
- 対応スピードが大幅に向上し、顧客満足度を最大化
金融:高度なリスク管理と透明性の確保
取引データ、リスク指標、コンプライアンスチェックを横断的に監視し、異常検知から対応判断、レポーティングまでを自動化します。複雑で厳格な金融業務においても、一貫性のある処理が可能です。
期待される効果
- 人為的なミスを最小限に抑えつつ、一貫性と透明性のある業務フローを構築
- 監査や規制対応にも耐えうる、信頼性の高いオペレーションを実現
カスタマーサポート:想定シナリオを超えた柔軟な対話
問い合わせ内容に応じて、必要な情報の取得、システムへの更新処理、最適な解決策の提示をその場で判断し、動的に切り替えます。固定された対応フローに縛られない、柔軟なサポートが可能になります。
期待される効果
- 従来のチャットボット(固定シナリオ)では対応が難しかった例外的なケースに対しても、状況に応じて柔軟に対応
エージェント型AI時代に重要になるAIデータ
エージェント型AIワークフローでは、AIが業務プロセスそのものを担うため、データの品質がそのまま業務品質・システム信頼性に直結します。
単なるモデル精度だけでなく、実運用を前提としたデータ設計が不可欠です。
ワークフロー向けAIデータに求められる要件
エージェント型AIワークフローを安定して機能させるためには、以下のようなデータ要件を満たす必要があります。
- 実運用を想定したシナリオデータ
- ツール連携を前提とした入出力データ
- 失敗・例外ケースを含む検証データ
- 継続的に更新・管理される体制
静的な学習データのみでは、動的に変化する業務ワークフローを十分に支えることはできません。実際の業務環境を反映した、更新可能なデータ設計が求められます。
エージェント型AIワークフローを支えるデータ基盤
エージェント型AIワークフローの構築には、以下が不可欠です。
- 高品質なデータアノテーション
- ツール利用を前提とした評価設計
- ワークフロー単位でのテスト設計
- 継続的な検証と改善プロセス
Appenは、こうした実運用を前提としたエージェント型AIワークフローを支えるための、AIデータ基盤と厳格な品質管理プロセスを提供しています。
まとめ
エージェント型AIワークフローは、AIを単なる文章生成や補助的なツールから、業務を自律的に理解し、計画し、完遂する実行主体へと進化させます。
今後のAI活用で重要なのは、「何を生成するか」ではなく、「どの業務ワークフローをAIに任せるか」という視点です。この発想の転換こそが、AIを真の業務変革へとつなげる鍵となります。
エージェント型AIワークフローの導入や設計についてご関心がありましたら、お気軽にご相談ください。

