コンピュータビジョンとは?定義・仕組み・活用事例・導入

03/30/2023

コンピュータビジョンとは?

本記事では、コンピュータビジョンの定義、実現できること、仕組み、活用事例、企業がコンピュータビジョンを導入するためのステップを解説していきます。

コンピュータビジョンの定義

コンピュータビジョン(Computer Vision)とは、コンピュータが画像や動画の内容を人間のように理解できるようにする技術です。

コンピュータは、単に画像や映像を見ただけでは、その中に何が写っているかを自動的に把握することはできません。しかし、人間のように「目で見て理解する力」を持たせることで、大量の視覚データを高速かつ高精度に解析できるようになります。

コンピュータビジョンと画像認識・物体検出の違い

コンピュータビジョンは、画像認識や物体検出を含む、より総合的な視覚AIの技術領域です。画像や動画を理解し、その後の判断や行動に繋げることを目的としており、画像認識や物体検出以外にも、顔認識、セグメンテーション、物体追跡、画像検索などで活用されています。

画像認識とは

画像認識とは、画像に何が写っているかを認識・分類する技術です。例えば、「これはクルマだ」「これは家だ」「これは人間だ」など、被写体が何であるか理解することを目的としています。

物体検出とは

物体検出とは、画像や動画の中から複数の物体を同時検出する技術です。どこに何があるのか理解するため、バウンディングボックス(物体を囲む長方形)などで物体の位置を示すのが一般的です。自動運転車や外観検査で活用されています。

機械学習とディープラーニングとの関係性

コンピュータビジョンは、通常、機械学習やディープラーニングといったAI技術を活用して実現されます。

機械学習では、画像内のパターンを見つけ出し、統計的なアルゴリズムによって画像を分類したり、特定の物体を検出したりします。画像に写っているものが何かを判断したり、画像の中から特定のものを探し出したりすることができます。

ディープラーニングは、ニューラルネットワークという人間の脳の仕組みを模倣した技術を用いて、大量のデータからパターンを自動的に学習し、より高度な認識や判断を可能にします。これにより、より複雑な画像認識や物体検出が可能になります。

コンピュータビジョンで実現できること

コンピュータビジョンによって、以下のような処理が可能になります。

  • 画像認識(Image Recognition)
  • 物体検出(Object Detection)
  • 顔認識(Facial Recognition)
  • セグメンテーション(Segmentation)
  • 自動運転(Autonomous Driving)
  • 画像解析(Image Analysis)
  • 画像検索(Image Search)
  • 外観検査(Apperance Inspection)
  • 異常検知(Anomaly Detection)
  • 物体追跡(Object Tracking)

コンピュータビジョンの仕組み

コンピュータビジョンは、通常、データ取得、前処理(画像処理)、特徴抽出、物体検出・認識、分類・解析、出力と意思決定などのプロセスで画像や動画を処理し、その後の判断や行動に繋げる技術です。コンピュータビジョンの基本的な仕組みを解説します。

データ取得(Data Acquision)

カメラやセンサーを使って、画像や動画を取得します。

前処理(Preprocessing)

前処理は、取得した画像や動画を、コンピュータが扱いやすい形式へ処理するプロセスです。前処理は、次のような手法で行われます。

  • サイズ変更
  • グレースケール
  • ノイズ除去
  • 色調補正
  • ピクセル値の正規化
  • 二値化

特徴抽出(Feature Extraction)

特徴抽出は、前処理の後に行われるプロセスです。データ内のパターンや物体を認識するのに重要な物体の形状、エッジ、角度、色、模様などの特徴を抽出します。

物体検出・認識(Object Detection and Recognition)

物体検出・認識は、特徴を抽出した後に行われるプロセスです。機械学習またはディープラーニングモデルを使用して、抽出した特徴を事前トレーニング済みデータセットと比較することで、物体を識別します。

分類・解析(Classification and Analysis)

分類・解析は、物体検出・認識の後に行われるプロセスです。検出された物体を解析し、事前に定義されたカテゴリーに分類します。例えば、自動運転のシステムでは、検出された物体を、他の車両、交通標識、歩行者などに分類します。このような処理には、畳み込みニューラルネットワーク(CNN: Convolutional neural network)と呼ばれる技術が一般的に使用されています。

出力と意思決定(Output and Decision-Making)

出力と意思決定は、分類・解析の後に行われるプロセスです。解析結果に基づき、結果を出力したり、次に取るアクションを決定します。例えば、生産ラインでの外観検査(品質管理)では、検出された欠陥や不良品に関する解析結果を出力します。また、セキュリティシステムでは、不審な人物を検出して、アラームを作動させるなど、解析結果に基づく意思決定が行われます。

コンピュータビジョンの活用事例

コンピュータビジョンはさまざまな業界で活用・応用されています。各業界の主な活用事例として以下のようなものがあげられます。

自動車業界

  • 自動運転システムの実現
  • 運転支援システム(ADAS)による安全性向上
  • ドライバーモニタリングシステムによる眠気・不注意の検出

ヘルスケア医療分野

  • 医用画像を用いた病気の早期発見
  • 患者の状態を監視するモニタリングシステム

小売業

  • 在庫管理の自動化
  • 顧客行動分析
  • リアルタイム盗難検出

セキュリティ分野

  • 監視カメラによるリアルタイム監視
  • 顔認識によるアクセス制御システム
  • 異常検知による防犯対策

製造業

  • 生産ラインでの外観検査による品質管理
  • 欠陥や不良品の自動検出
  • ロボットによる作業自動化

農業

  • ドローンや画像解析による作物の健康状態モニタリング
  • 自動収穫機による収穫作業の省力化
  • 家畜の位置や健康状態の追跡・管理

建設業

  • 現場作業員の安全監視と事故防止
  • 建材や構造物の欠陥検出
  • 重機・機器の位置や稼働状況の追跡

スマートシティ分野

  • カメラを活用した交通状況のリアルタイム管理
  • ゴミの種類を自動で識別・分別
  • 交通事故やトラブルのリアルタイム検出

輸送・物流

  • 通行料の自動徴収
  • 車両管理・追跡
  • 道路状況監視

企業がコンピュータビジョンを導入するためのステップ

コンピュータビジョンの導入は、専門的な技術や環境が求められるため、非常に複雑です。

以下の重要なステップを順番に踏むことで、プロジェクトをより効率的かつ確実に進めることが可能です。

ビジネスニーズの評価

自社のどの業務領域でコンピュータビジョンが価値を発揮できるかを明確にしましょう。セキュリティ対策や品質管理など、業務プロセスの自動化・効率化が期待できる分野を洗い出すことが重要です。

データ収集

コンピュータビジョン導入には、大規模かつ高品質なラベル付き画像・動画データデータ収集が不可欠です。

技術選定

自社のニーズに合った技術、ツール、ハードウェアを選定しましょう。既存システムとの互換性や拡張性も重視し、スムーズな統合ができるか確認することが重要です。

インフラ構築

コンピュータビジョンのリアルタイム処理や大規模データ処理に対応できるインフラが不可欠です。

既存システムとの統合

CRMやERPなどの業務システム、さらにはIoTデバイスと統合・連携することで、リアルタイム処理と高度な分析が可能になります。既存システムとシームレスに連動することが重要です。

社員教育

コンピュータビジョンを導入するだけでなく、それを運用・活用できる人材の育成も不可欠です。操作方法だけでなく、AIやデータの基本的な知識(AIリテラシー)も社内で共有・定着させます。

試験的運用

本稼働の前に、小規模な試験的運用を行い、パフォーマンスを評価し、KPI(精度、処理速度、コスト効率など)を基に課題・改善点を洗い出します。

本稼働・継続的な改善

コンピュータビジョンシステムは、導入して終わりではありません。継続的なチューニングが必要です。エラー率やパフォーマンス指標を継続的に監視・改善しましょう。

コンピュータビジョンプロジェクトを円滑に進めるためのポイント

Appenでは、コンピュータビジョンを活用した最先端のAIモデル構築において、豊富な知見と実績を持つ専門チームがプロジェクトを支えています。

コンピュータビジョン責任者であるクオ・チンは、AIモデルの開発をスムーズに進めるための重要なポイントとして、以下の3つのアドバイスを挙げています。

成功基準の定義

コンピュータビジョンプロジェクトの成果を正しく評価するためには、明確な成功基準(評価指標)を事前に定義しておくことが重要です。

例えば、物体検出プロジェクトでは「IoU(Intersection over Union)」、物体追跡プロジェクトでは「MOTA(Multiple Object Tracking Accuracy)」といった指標が一般的です。

また、新規性の高いプロジェクトやユースケースに特化した案件では、業務ニーズに応じたカスタム指標を用いることもあります。

こうした評価指標をあらかじめ設定しておくことで、開発チーム、プロダクトマネージャー、アノテーションベンダーの間で共通の目標が明確になり、データ品質やモデル性能の最適化がより効率的に進むようになります。

評価・分析の重要性

コンピュータビジョンの開発では、単に主要な評価指標(KPI)を見るだけでは不十分です。

開発者は常にテスト結果をモニタリングし、特定の条件下でなぜモデルが期待通りに動作しないのか、その理由を深掘りする必要があります。

特にコンピュータビジョンでは、パラメータ設定のミスが視覚的なアーチファクトとして直ちに現れるため、問題の原因を視覚的に把握できる仕組みが極めて重要です。

人間とAIの協働

人間の知識とAIの計算能力を組み合わせるアプローチは、システムの信頼性を向上させるだけでなく、不確実性やリスクを低減するための重要な手段となります。

例えば、自動運転車の開発においては、安全性を最優先にした知覚アルゴリズムの開発が進められており、そのプロセスでは非常に正確なグランドトゥルース(真実のデータ)を提供するために、データアノテーションを専門に行うベンダーが必要不可欠です。

Appenのソリューション

Appenは、大規模言語モデル(LLM)アプリケーション開発を検討している企業向けに、さまざまなサービスと製品を提供しています。

データ収集・データアノテーション

AIデータ企業のAppenは、AIデータ業界のグローバルリーダーとして、28年以上にわたり、290以上の言語・方言に対応した高品質なデータを提供してきました。データクリーニング、データセット作成、データ収集データアノテーションなど、お客様のAIモデル開発に必要な一連のサービスを提供しています。詳しくはこちらをご覧ください。

ファインチューニングとRLHF

AIデータ企業のAppenは100万人以上のクラウドワーカーと経験豊富な専門チームを有し、お客様のモデルを最適化するためのファインチューニングと、人間とAIのフィードバックによる学習(RLHF)を支援します。バイアスを最小限に抑え、高性能なモデル開発を実現します。

大規模言語モデル開発プラットフォーム

Appenが独自に開発した大規模言語モデル開発プラットフォームは、大規模言語モデルの開発プロセスを効率化します。トレーニング、ファインチューニングだけでなく、開発に必要な様々なツールを提供し、迅速なモデル開発をサポートします。

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